医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • 2022.12.31

    2014年のブログ(第9話)にも書きましたが、院長室にオリーブの木があります。2009年の開院時に心が弱くなった時の支えにしようと購入して、もう10年以上の付き合いです。しかし、手塩にかけて世話をしてきたにもかかわらず、ほとんどすべての葉が落葉して枯死寸前の状態に陥り、クリニックに出入りの植木屋さんから“インドアの鉢植えは5年が限界ですよ”と引導を渡されたこともあります。



     
     
    研究室の拡充工事に伴い院長室をクリニックビルの5階に移した時を機に、ずっと屋内で育ててきたオリーブでしたが思い切ってベランダに出し、藤沢の強い日光と海風の中で育てることにしました。それから数年、自然の中で育てたのが良かったのかオリーブは再び樹勢を取り戻し、誰に見られることもなくひっそりとですが、しかし逞しく育ちました。

    今年10月のとある日、風に吹かれて枝をなびかせているオリーブの木を見ていた時、葉陰に綺麗な黄緑をした丸い実が一つぶら下がっているのに気づきました。長い付き合いの中で初めてのことだったので、その日から部屋に上がるたびにベランダに出てオリーブの実が落ちてはいないか、鳥に持っていかれてはいないか、オリーブの実の無事を確かめる日々となりました。

    オリーブは選定後や自家受粉で稀に実がなることもあるそうですが、基本的には他家受粉で傍に種類の異なるオリーブの木がないと実をつけないそうです。そうすると、どこか遠くから5階のベランダまで風に乗って花粉が運ばれて受粉し、この実を実らせてくれたことになります。10年以上の間一度も起こらなかったことが初めて起こったようです。
    そのとても低い確率を思うとこの実の中に奇跡を叶えてくれる力が秘められているような気がして、このオリーブの実をミラクルと名付けました。そして、なんとなく幸せな気分でミラクルの安否を気に掛ける日々が続きました。しかし、冬が訪れ寒さが募ってくると、ミラクルが落実してただ土に戻っていくのが寂しく思われ、先日心を決めてミラクルをそっと切り取り、小さなガラス瓶の中に入れて机の上に飾りました。
    10年越しの苦節をともにしたオリーブからの夢を叶えてくれるお守りとしてずっと傍に置いておきたいと思います。

    2022年も今日で終わろうとしています。
    多くの事件や事故そしてコロナなどの疾病や戦争など、ある日突然訪れるかもしれない不幸が溢れている社会で、スタッフ全員が大過なく揃って新年を迎えることができることは感謝すべき奇跡のようにも思われます。

    スタッフの皆さん、そしてYSYCに通院してくださった患者様、2023年が実り多き無事な年でありますように心から祈っています。



     
     
    2022年12月31日 院長 山下直樹
  • 2022.10.26

    先日、午前の診療を始めるために院長室の洗面台に向かってコンタクトレンズを入れていました。

    “さあ、今日もがんばろう。”
    と気合を入れて振向きざま、左目の視界が突然ぼやけてしまいました。

    “あれっ、しまった!コンタクトが外れたかな?”
    左目を何度瞬きしても視界はぼやけたままでした。
    洗面台を舐めるように調べても、這いつくばって床を探してもレンズはどこにも見あたりませんでした。


    使い捨てレンズなので紛失してもそれほど痛手ではないのですが、探してもその在りかがわからないとなると、
    まだレンズが目に残っているのではないかという疑念が湧いてきます。
    鏡の前に立って瞼を押し広げて上下左右に目を動かしても自分で見える範囲には限界があり、コンタクトレンズは行方知れずのままでした。

    “急いでいる時にかなわないなあ“と思いつつ、診療開始時間が押し迫ってきたので探すのを諦めて外来に降りることにしました。


    どことなく違和感がある左目を気にしながら午前の診療を無事に終えることができました。


    目の中にレンズが残ったままにしておくと早晩感染が起こるな。ここはやはりプロに診てもらうのが一番だ。と考え、コンタクトレンズ店に併設している眼科に連絡を入れました。幸い、午後の診療が始まる前に予約が取れたので早速診察に向かいました。


    待合室は私だけですぐに名前が呼ばれました。
    いかにも週に一度ほどアルバイトに来ているという感じの白衣を私服の上に羽織った三十代と思しきお兄さん医師がその日の担当でした。

    事情を説明すると

    “はい、それじゃあ診てみますねえ。
    上向いて、ハイきれい。
    下向いて、ハイきれい。
    右向いて、ハイきれい。
    今度は左向いて、ハイきれい。
    滑りを良くする色のついた目薬さしまーす。
    目をぱちぱちしてくださーい。
    ハイ、やっぱりきれい。
    コンタクトは残っていませんよ。ご心配なくー。“

    診察はリズミカルに終了しました。


    “来て良かった。目の中に残っていないことが分かっただけでもずいぶん安心だ。”
    と思いつつ会計に向かうと受付さんが
    “レンズは残っていないようなので左目にレンズを入れていきますか?同じものをすぐにご用意できますよ”と勧めてくれました。

    午後診療も差し迫っていたので用意されたレンズを左目に入れ、軽い足取りでコンタクトレンズ店を後にしました。


    しかし、クリニックへの帰り道、突然に目に違和感を感じて指を近づけると睫毛にコンタクトが引っかかっていました。

    “ええっ、また外れた?今日は調子悪いなあ。”と思って指先ではずれたコンタクトをつまんだまま帰り道を急ぎました。
    すると、右目を閉じても電信柱の広告がはっきり読めることにすぐに気づきました。

    “あれー、何、これ?”
    外れたレンズは指先にあるよ。けれど左目はしっかり見えるよ。なにこれあるよ??
    一枚のレンズが突然二枚になったのかな?Mr.マリックのMagicみたいに!
    いやいや、そんなわけないな。
    ということは“あのお兄さん先生、目に残っていたレンズに気づかず、その上からもう一枚レンズをつけてしまったのかな?
    そうだね。そっちの方が考えやすいな。
    などなどいろいろ考えながらも
    まあ、文句言っても始まらないし、レンズの在りかの辻褄が合ったわけだから、結果オーライということでまあいいかと自分を納得させてクリニックに戻りました。


    話は変わりますが、YSYCの新規スタッフの採用基準は二つあります。
    第一は自分の仕事に情熱と責任を持てる人であること。
    第二は意地悪な人でないこと。
    です。


    あのアルバイトお兄さん医師は眼科だけど仮にYSYCを受けたとしても不採用だな。二番目の条件はクリアできても、一番目の条件で引っかかりそうだから。

    午後の外来の合間にそんな大きなお世話なことを考えていました。

    でもね、どんな仕事するにしても情熱と責任は大切だよ!



    2022年10月25日 院長 山下直樹
  • 2022.10.03

    職員のコロナワクチン接種、着床研究所の増設工事、PGT-A&SRの施設認定、生殖医療の保険収載、YSYCオリジナルの電子カルテ作成と導入、学会発表や保険医協会等での講演など昨年から今年にかけて日常の診療以外に対応しなければならない課題が目白押しでした。その中の多くに公的機関との交渉が含まれており、役所特有の難解な文章や仕事のスピード感の違いなどにより非常にストレスが溜まる日々が続きました。私一人では到底対処できない難題も多く、多くのスタッフの力を借りて一つ一つをやっとのことで乗り越えてくることができたように思います。

    そして、ようやく今年中に目鼻をつけなければならない最後のプロジェクトに取り掛かろうとしていた矢先、この課題の根幹を揺るがす申し出が突然に入り、大きな判断を迫られる事態に陥りました。

    後悔の残らない判断を下すことは心身ともに大きなエネルギーを必要とする作業です。とりわけ、その結果が自分の生き方や周りの人達の生活に大きく関わる場合はなおさらです。

    私は岐路に立った時、やる、やらないのどちらかを選ぶ場合にはやる方を、いくつか選択肢がある場合には、損得勘定よりは、流れとか縁とか情熱を感じられる方を選択するようにしてきました。そして、後は決めたことを一生懸命にやるだけで、結果が良くも悪くもそれが運命と割り切ってきました。そのため、周囲の人からはもっと考えた方が良いのではとか、決めるのが早すぎないかとか半ばあきれ顔で忠告を受けることもしばしばでした。

    しかし、今回は決めようとしても
    何のためにそんな苦労しなきゃいけない?
    今のままで十分、何が不満?
    人のためにと思っても、自分が思うほどには誰も感謝しちゃくれない。
    などなど、ネガティブな思いばかりが先立って、心が前に進もうとしませんでした。
    笑顔の無い日々が続く中で、こんな心模様では悔いの残らない判断はできないように思われました。

    精神的にとても疲れていると感じました。

    大阪駅で大和路線に乗り換えて新今宮駅へ。
    そこで南海電鉄高野線の特急に乗り1時間20分で高野山の麓の極楽橋駅に着きます。
    そして、接続するケーブルカーに乗り換えてようやく高野山に到着です。

    真言密教の聖地である高野山は街全体に静謐な時間が流れているのが感じられます。
    朝早くに出発した旅もすでに3時を回っており、宿泊する宿坊に荷物を預け、高野山の聖地のひとつである壇上伽藍に足を運びました。高野山はひとつひとつの建築物のスケールが大きいことに驚かされますが、その中でもひときわ立派な根本大塔が台風一過の青空を背景に鮮やかな朱色を輝かせて聳え立っていました。この場所で多くの僧侶がそれぞれの思いを抱いて修行されてきたのだと思うと、数知れない祈りを包み込んだ1200年という長い時間が境内の隅々にまで深く浸み込んでいるように思われ、自ずと敬虔な気持ちになっていることに気づかされました。



     
     
     
     
     
    人影が少なくなり静かに暮れていく道を宿坊に戻り、限られた食材ながらも工夫を凝らして味付けされた精進料理を美味しくいただきました。確かにここには、酒を飲み、肉食を貪り、大声で騒ぐ俗世とは一線を画する静かながらも張りつめた精神世界が存在することが肌で感じられました。

    翌朝6時から朝の勤行があり本堂に向かいました。
    三人の僧侶の歌うように流れる読経を聞きながらお経の意味を考えていた私にとってご住職の法話は非常に興味深いものでした。
    曰く、仏教ではよく前世とか来世とかという言葉が使われますが、私達の宗派では現世しかないと考えています。そして、お経は “過去に感謝し、行く人の無事を祈る” お釈迦様のお言葉なのです…。

    “行く人の無事を祈る” かあ。優しい言葉だな。
    何故かこの言葉が私の心になんの抵抗もなく深く染み入りました。

    自分の知らないところで、気づかないところで誰かが自分の無事を祈り見守ってくれている。そう思うと、独りよがりな孤独感が消え、感謝の気持ちが湧いてくるように感じました。
    そして、この言葉を心の中で繰り返していると、混沌とした心に明かりが射し込み視界が開けてくるようにも思われました。



     
     
     
     
     
     
     
    宿坊を後にして、高野山のもう一つの聖地である奥の院に向かいました。ご住職の話によれば、奥の院は彼らがお大師様と呼ぶ開山の祖空海が1200年の時を超えて今もずっと祈り続けていらっしゃる開かずのお堂だそうです。

    手を合わせお礼をお伝えして、深い杉木立と20万基に及ぶ墓標に囲まれた奥の院を後にしました。



     
     
     
     
     
     
     
     
    疲れた心にエネルギーと勇気をいただいた旅となりました。

    2022年9月30日 院長 山下直樹
  • 2022.05.24

    クリニックの前のファミリー通りの小路を少し入ったところに時々夕食を食べに行く中華料理屋さんがあります。
    注文は決まって酢豚定食なので、定員の中国人のお姉さんは私の姿を見ると一般のメニューの上に定食メニューをのせてテーブルに置いていきます。メニューに目を通すこともなく “酢豚定食お願いします” と言うと、お姉さんは厨房に向かって中国語で “酢豚定食一丁(たぶんそう言っていると思います)”と叫びます。
    中華鍋で調理をする威勢のいい音が聞こえてくるとまもなく、酢豚、ザーサイ、中華スープ、山盛りのライスそしてデザートの杏仁豆腐の乗ったトレイが運ばれてきます。
    ぱさぱさしたご飯はともかくとして、味はまあまあでお腹がいっぱいになるお得なメニューです。
    今日一日の出来事を振り返りながら黙々と熱々の酢豚を頬張ります。

     
    ご存じの方も多いと思いますが4月から生殖医療に健康保険が適用され、人工授精や体外受精の多くの部分で保険診療ができるようになりました。
    これまでの助成金が利用できなくなること、使える薬剤の種類や使用法に制限が加わること、採血や検査の回数が最低限に絞られること、同意書や治療履歴や治療計画書など必要とされる文書が数多くあることなどデメリットも多々ありますが、治療費が3割で済むわけですから患者さんにとっては朗報だと思います。
    しかし、保険の概要が決まったのが年度末も押し迫った3月中旬、実際の運用法については暗中模索の見切り発車だったので、医療現場はどこもその対応に追われて、てんやわんやの4月を迎えました。

     
    昨年の暮れ、保険導入準備のための研修会が何度か開かれました。その席で、産婦人科学会や生殖医療学会の役員の方たちが
    “そろそろ、生殖医療もほかの医療と同じように保険診療の下で誰がやっても同じ結果が出るようにしましょうよ。今までは、いろいろな先生がこのやり方がいい。いや、こっちのやり方がいい。と百花繚乱の医療でしたが、そうではなくて、一定の費用で、一定の治療法で誰がやっても同じ結果が出るようにしましょう。”
    と挨拶した言葉が耳に残っています。

     
    “ああ、生殖医療にも定食の時代がやってくるのかな。”
    そんな考えが私の頭を過っていきました。

     
    YSYCでは無駄のない洗練された治療を穏やかな環境で実践することを目標に開院以来診療を重ねてきました。
    必要な検査は徹底的に行う一方で、形式的に行われている検査は行わない。論文等の結果を鵜吞みにはせず、自分たちの目で検証して納得できたものだけを治療に取り入れる。丁度、プロの料理人の方たちが素材や調理法に強くこだわるように、患者さんにとって身体的にも経済的にも時間的にも倫理的にも無駄を省いた負担の少ない治療を、いくつもの こだわりで研ぎ澄ましながら、作り上げてきた経緯があります。

     
    しかし、保険診療は決して必要で十分な治療をカバーするものではありません。現在行われている平均的な治療の最低限をカバーしようというものです。その点では、この料金でこのボリュームと味だったら文句は言えないという妥協の調和点である定食と似たところがあります。そして、残念ながらそこには心ある医師が大切にしてきたそれぞれのこだわり・・・・が入り込む余地はないように思われます。

     
    食材や味付けにこだわった美味しい料理を作り手の気概とあわせてお客さんに楽しんでもらうような名店の時代は過ぎ去って、誰もがまあまあ満足できる味とボリュームと価格の定食を作る。そんな時代が生殖医療にもやって来たのかもしれません。

     
    レジでお姉さんに1,000円札を渡し、100円玉2個のおつりを受け取りながら満腹感と共に店を出ました。
    これからは心のこもった定食とはどんなものかを考えていきたいと思います。

     
    2022年5月23日 院長 山下直樹
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