医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • 2022.05.24

    クリニックの前のファミリー通りの小路を少し入ったところに時々夕食を食べに行く中華料理屋さんがあります。
    注文は決まって酢豚定食なので、定員の中国人のお姉さんは私の姿を見ると一般のメニューの上に定食メニューをのせてテーブルに置いていきます。メニューに目を通すこともなく “酢豚定食お願いします” と言うと、お姉さんは厨房に向かって中国語で “酢豚定食一丁(たぶんそう言っていると思います)”と叫びます。
    中華鍋で調理をする威勢のいい音が聞こえてくるとまもなく、酢豚、ザーサイ、中華スープ、山盛りのライスそしてデザートの杏仁豆腐の乗ったトレイが運ばれてきます。
    ぱさぱさしたご飯はともかくとして、味はまあまあでお腹がいっぱいになるお得なメニューです。
    今日一日の出来事を振り返りながら黙々と熱々の酢豚を頬張ります。

     
    ご存じの方も多いと思いますが4月から生殖医療に健康保険が適用され、人工授精や体外受精の多くの部分で保険診療ができるようになりました。
    これまでの助成金が利用できなくなること、使える薬剤の種類や使用法に制限が加わること、採血や検査の回数が最低限に絞られること、同意書や治療履歴や治療計画書など必要とされる文書が数多くあることなどデメリットも多々ありますが、治療費が3割で済むわけですから患者さんにとっては朗報だと思います。
    しかし、保険の概要が決まったのが年度末も押し迫った3月中旬、実際の運用法については暗中模索の見切り発車だったので、医療現場はどこもその対応に追われて、てんやわんやの4月を迎えました。

     
    昨年の暮れ、保険導入準備のための研修会が何度か開かれました。その席で、産婦人科学会や生殖医療学会の役員の方たちが
    “そろそろ、生殖医療もほかの医療と同じように保険診療の下で誰がやっても同じ結果が出るようにしましょうよ。今までは、いろいろな先生がこのやり方がいい。いや、こっちのやり方がいい。と百花繚乱の医療でしたが、そうではなくて、一定の費用で、一定の治療法で誰がやっても同じ結果が出るようにしましょう。”
    と挨拶した言葉が耳に残っています。

     
    “ああ、生殖医療にも定食の時代がやってくるのかな。”
    そんな考えが私の頭を過っていきました。

     
    YSYCでは無駄のない洗練された治療を穏やかな環境で実践することを目標に開院以来診療を重ねてきました。
    必要な検査は徹底的に行う一方で、形式的に行われている検査は行わない。論文等の結果を鵜吞みにはせず、自分たちの目で検証して納得できたものだけを治療に取り入れる。丁度、プロの料理人の方たちが素材や調理法に強くこだわるように、患者さんにとって身体的にも経済的にも時間的にも倫理的にも無駄を省いた負担の少ない治療を、いくつもの こだわりで研ぎ澄ましながら、作り上げてきた経緯があります。

     
    しかし、保険診療は決して必要で十分な治療をカバーするものではありません。現在行われている平均的な治療の最低限をカバーしようというものです。その点では、この料金でこのボリュームと味だったら文句は言えないという妥協の調和点である定食と似たところがあります。そして、残念ながらそこには心ある医師が大切にしてきたそれぞれのこだわり・・・・が入り込む余地はないように思われます。

     
    食材や味付けにこだわった美味しい料理を作り手の気概とあわせてお客さんに楽しんでもらうような名店の時代は過ぎ去って、誰もがまあまあ満足できる味とボリュームと価格の定食を作る。そんな時代が生殖医療にもやって来たのかもしれません。

     
    レジでお姉さんに1,000円札を渡し、100円玉2個のおつりを受け取りながら満腹感と共に店を出ました。
    これからは心のこもった定食とはどんなものかを考えていきたいと思います。

     
    2022年5月23日 院長 山下直樹
  • 2022.01.30

     
    最近、よく聴く歌に野田愛実さんの“おかえり”という歌があります。
    たまたま見ていたテレビ番組のエンディングにこの歌が流れて心に浸みました。
    ネットで調べると、野田愛実という人が歌っていること。まだ発売されておらずYou tubeでしか聞けないことが分かりました。
     
    “頑張りすぎないで いつでも帰っておいで
    そんな風に言われると 心折れてしまいそうで
    電話の返事も素っ気なくてごめんね
    もうすぐ帰るから
    ・・・・
    ・・・・
    心強くするあなたのおかえり
    聞きたくて帰るよ”
     
    野田愛実さんが語りかけるように切々と歌い上げていきます。
     
    この歌を聞いていて改めて気づかされるのは、日々の挨拶が普通にできる幸せです。
    行く場所があって、帰る家があって、そこで交わされる何気ない挨拶が自分が独りではないこと、確かに繋がっていることを無意識のうちに感じさせてくれて心を穏やかにしてくれるのだろうと思います。
     
    “おはよう”と“さよなら”そして、“ただいま”と“おかえり”
    とても短い言葉だけれど、そんな言葉が足早に流れていく時間の中で忘れがちな家族や同僚との絆を紡いでくれているのだと思います。
     
    新しい年を迎え、2021年が思い出にしまい込まれていく中でスマホのアルバムを開くと一枚一枚の写真に私を支えてくれる家族やクリニックのスタッフとの記憶が蘇ってきます。その時々、人それぞれに、辛いことや悲しかったこと、そして腹ただしかったことがあったかもしれませんが、笑顔というオブラートに包んで頑張ってくれている姿には心が熱くなります。
     
    そんなたくさんの思い出の中でもスタッフと一緒に撮ったお気に入りの二枚の写真があります。
     
    一枚は11月に鳥取県の米子市で開催された日本生殖医学会で演題を三題発表した帰り道に立ち寄った鳥取砂丘で撮った写真です。
    小雨交じりの寒空が垂れ込める時期でしたが、この時は砂丘を越えてくる強風が雲を払い、真っ青な青空が広がってくれました。空と海とのブルーのグラデーションと砂丘の砂色の美しいコントラストを背景に撮影した写真です。スタッフの笑顔が輝いていて私に希望とか夢を感じさせてくれます。
     


     
     
     
     
     
     
     
     
    もう一枚は昨年暮れの忘年会の写真です。
    日常の業務は心身ともに忙しく笑顔になりにくいこともあると思いますが、それでも
    力を合わせて笑顔でクリニックと私を支えてくれた私の自慢の仲間たちです。


     
     
     
     
    言いそびれたたくさんの“ありがとう”を大切な仲間たちに伝えて、新しい年を力を合わせて乗り切っていきたいと思います。
     
    (追記:ブログに掲載する写真ではスタッフの顔は出さないことにしていますが、今回は特例として写真を修整せず掲載します)
     
                                 
     2022年1月30日 院長 山下直樹
     
  • 2021.12.14

    先日、旧友のY君から電話がありました。
    Y君は医学部の同期で、物事にこだわらない飄々とした性格で、群れることなく我が道を行くといった感じで学生時代を過ごしていました。
    開業した時期が私とちょうど重なったことからお互いに連絡を取り合うようになりました。

    “人生はたまたまだね。” 感慨深げな口調で彼は切り出しました。

    開業医は体が資本なので彼は開業以来毎年健康診断を受けてきたそうです。
    ただ、健診の精度には常々疑問を持っていて、今年はスケジュールを調整してまで健診を受けるかどうか迷っていたそうです。

    そんなある日
    “知り合いの病院に新しいCT装置が入って、短時間で全身のCTを撮ることができる。簡単に終わって、精度も高いし、都合を合わせてくれるそうだから一度受けてみたら”
    と家族に勧められたそうです。

    Y君は気乗りしなかったものの、たまたま都合が空いていたため重い腰を上げて検査を受けることにしたそうです。

    検査の日、事前の説明の通りCT検査はものの10分ほどで終わり、検査結果を聞き診察室を出ようとした時
    “Yさん、大腸の内視鏡検査は受けたことがありますか?”
    と担当した医師が尋ねたそうです。
    これまでの健診でも便の潜血検査は含まれていたものの、便秘がちで検体を提出するタイミングが合わなかったことから、ずっとキャンセルしてきたとY君が答えると
    “大腸がんは最近非常に増えていて、女性では死因のトップ、男性でも三番になっています。Yさんも都合が合うときに一度やってみたらどうですか?”
    と勧めてくれたそうです。

    医師の説明を聞きながら、大腸がんの治療後に装着することのある人工肛門をつけている自分の姿が、何故かY君の頭をよぎったそうです。そして、“自分には無理かな”と思ったそうです。
    “自分だけの命じゃないからね。病気とはある程度闘わなければいけないんだろうけど。でも、とことん闘おうとは思わないな。それが運命みたいな気もするし。”
    Y君は学生時代と同じく、自分の健康にかかわることなのにまるで他人のことを話すような少し冷めた口調で続けました。

    そんな彼ですから、普段なら “また機会があったらよろしくお願いします。”と礼を述べて席を立つのですが、その時は、どういう風の吹き回しか検査を受けてみようと思ったそうです。

    大腸の内視鏡検査は肛門からファイバースコープを挿入して大腸を検査するため、便があると観察の邪魔になります。そのため、前日夕食からの絶食や多量の下剤の服用があったりでなかなか準備の大変な検査です。

    早朝から繰り返し下剤を飲み何度もトイレに通いながら、やっぱり検査をキャンセルしようかとY君は何度も思いながらも、彼曰く“苦行を乗り越えて”病院にたどり着いたそうです。

    “静脈麻酔が入るとパソコンがシャットダウンするように記憶が途絶えるんだよね。眠るというより空白。そして、“Yさん終わりましたよ。”という看護師さんの声が遠くからだんだん近づいてきて日常に戻ってくる感じだね。
    それから、担当医が検査結果をモニターを見ながら話してくれる。自分の大腸の中の動画を他人みたいに見ながら説明を聞くって不思議なポジションだよね。
    “大腸のひだの陰の見落としやすい場所に1㎝ほどの大きさのポリープがありました。大腸のポリープは大腸がんの前癌状態の可能性もありますから焼き切って、悪いものがないかどうか病理検査に出しておきました。病理の結果は後日連絡します” ”

    “いつもの医師と患者の立場が入れ替わって、患者として病理組織を待つ気分はやっぱり違うもんだね。なんて言うんだろ、検査結果を解析してこれから治療をどうしようという医師としての頭ではなくて、ただシンプルに良い結果であればいいなって思うね。”

    1週間後に結果のメールが届いてクリックすると
    ポリープは癌の一つ手前の高度異形成でした。焼き切った断端には異形細胞は認めず取り切れていると考えられますのでご心配はいりません。
    と書かれていたそうです。

    Y君はその検査結果を読み返しながら、何故か背筋がぞくぞくする感覚を覚えたそうです。
    “たまたまなんだよね。“たまたま”と“もし”の積み重ね。
    たまたま家族が検査を勧めてくれて
    たまたま予定が合って検査を受けて
    もし、担当医がポリープの存在を見逃していたら
    もし、高度異形ではなくて進行癌だったら

    人生が大きく変わっていただろうね。病期が進んでから見つかったら、自分の性格じゃ病気と闘うこともないだろうしね。いろんな“たまたま”と“もし”が重なり合って人生は良きにも悪しきにも転んでいくものだね。運命って言葉でしか説明できないことが人生にはたくさんあるって改めて感じたよ。”

    言葉数の少ない彼には珍しく饒舌な電話は“お前も体に気をつけろよ。”という言葉で締めくくられました。

    受話器を置いてしばらくの間、薄氷の張った冷たく深く暗い湖の上でなにも知らずに無邪気に飛び跳ねて暮らしている人間の姿が心に浮かびました。
    誰と出会い、どのように生きて、どんな人生を送れるかは、確かにたくさんの“たまたま”と“もし”の結果であり、それを人は運命と呼ぶのだと思います。

    ただ、人生の全てが“たまたま”と割り切るのも味気ないので、その時その時を悔いの残らぬように懸命に生きて、後は風任せという感じで薄氷の上を歩いていくのがいいかな思います。

     
    2021年12月15日 院長 山下直樹

     
  • 2021.10.26

    先日、当院で治療し、無事出産された患者さんから出産報告書に添えてお手紙をいただきました。

    そのお手紙には、
    いくつかの施設を巡って治療を受けてきたけれどもうまくいかず、これで最後にしようと当院を受診されたこと。
    幸いなことに、時を待たずして治療が奏功し妊娠がスタートしたけれど、お腹に宿った赤ちゃんが流産せずに無事に育ってきてくれるかどうか、毎週の診察が待ち遠しい日であり、うまくいかないことを考えてしまうと怖くて苦痛にさえ思える日でもあったこと。
    そのような揺れ動く心境の中で、赤ちゃんの心臓の拍動がモニター画面に映し出された時ご自分の目を疑い、溢れてくる涙を抑えることができなかったこと。

    そして、生殖医療特有の先の見えない治療の中で、治療を継続するのか止めてしまうのか精神的にも肉体的にも経済的にも葛藤の月日だったこと。

    けれども、その苦難の道が長かったからこそ、我が子の重みと温かさを手に感じながら穏やかに眠る顔を見つめる時に湧き上がってくる喜びは何ものにも代えがたいこと。

    などが整った直筆で書かれていました。

    そして、お手紙は、もう一人欲しいと思う気持ちはとても強いけれど、経済的にも年齢的にもこれ以上は厳しく、凍結保存してある卵を移植することは難しい。自分がこのような幸せを味わえるのは医学の発達の積み重ねがあったからだと思う。だから、凍結した卵は廃棄せずに医学の発展のために研究に役立ててほしい。
    という一文で締めくくられていました。

    YSYCには生殖医療の発展に熱い情熱を持った培養師、研究員が揃っています。貴方の尊いお気持ちを無駄にしないよう有難く使わせていただきます。そして、ひとりでも多くの方が貴方と同じようにその手に赤ちゃんを抱く日が来るように役立たせていただくことをお約束します。

    最近は、仕事を持ちながら治療をされている方が多く、
    “仕事が忙しいから週末にしか診察に来れない。”
    “仕事が終わってからの通院になるからもっと遅くまで受付時間を延ばせないのか?”
    “1回で妊娠したいから最初から一番良い方法で治療してほしい”
    或いは、土曜日の混雑した外来中や診療終了時間間際に来院されて
    “治療について何も知らないから料金、診察回数も含めて詳しい説明をまとめて聞きたい”
    など患者さんの要望は多岐にわたります。
    そして、クリニックの対応がご自分の思いと異なった場合、患者さんの都合にあったおもてなしのできない施設として口コミでたたかれる時代です。

    YSYCでは治療の正確さを損なわない範囲で患者さんの要望に対応するようスタッフに指導していますが、それ以上に生殖医療は料理や教育と似ていて、丁度よい時期に、丁度よい手を、正確に加えることが成功への近道であり王道であると考えています。

    患者さんの都合に寄り添うおもてなしはもちろん大切ですが、それよりも、患者さんの心に寄り添い、患者さんの夢を叶えることが医療の中の最良のおもてなしであると考え、大切にしていきたいと思っています。

    お手紙を拝見し、その思いを新たに明日からも頑張っていきたいと思いました。
    ありがとうございます。

    2021年10月25日   院長 山下直樹
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