医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.08.20

    関東ではようやく晴日が見られるようになってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

     
    報告が遅くなってしまいましたが、7月に開催された日本受精着床学会で「短時間媒精における媒精時間と使用培養液の影響について」の内容で当院のデータ発表をしてきました。会場は神戸国際会議場でしたが、現地に赴かずZoom発表が可能でしたので、今回はZoomで参加させていただきました。

    当院では、ふりかけ法(C-IVF)で受精しなかった卵子を顕微授精(ICSI)により救済する「Rescue-ICSI」について、かなりの時間をかけて検討を重ねてきました。Rescue-ICSI成功のポイントは、施行までの「時間」です。C-IVF後にできるだけ早く不受精卵子を見極めることが重要ですが、精子侵入の有無を正確に判断するには時間を要します。しかしながら、判断に時間をかけすぎると、時間経過とともに卵子の質が低下してしまいます。ICSIに最適な時間は、(成熟卵子で得られた場合)採卵から4~5時間と言われています。これは当然Rescue-ICSIにも当てはまり、採卵から時間が経ちすぎてしまうと、Rescue-ICSIの効果が低くなってしまいます。無駄な時間をかけずに素早くRescue-ICSIをしたい一方で、C-IVFの時間を短縮してしまうと、C-IVFの受精率そのものが落ちてしまうという側面もあります。

    そこで、受精率を下げずにC-IVFを短時間で完了できる培養液について検討しました。添付資料にある培養液Bは、活性酸素除去効果がある抗酸化剤を豊富に含んでおり、受精現象に対する工夫が凝らされた製品です。培養液Bを使用することで、C-IVFの時間を6時間→3時間に短縮しても受精率が低下せず、さらに胚の成長にも影響しないことが分かりました。

    以上のことから、C-IVFの5時間後、つまり最初からICSIを選択した場合と同程度の時間でRescue-ICSIを施行する技術が確立しました。

     
    BLG2021.8.20用

     
    この内容について、Zoomを通じて発表させていただきました。

    会場からいくつか質問が来ましたが、残念ながら本検討のコンセプトが十分に伝わったとは言えないものでした。Zoom発表だと発表者の顔が見えず、スライドが淡々と流れているようにも見えますので、LIVE発表のように強調したいところがうまく伝わらなかったのかもしれません。説明資料や言い方などをZoom発表用に工夫しなければならないと思いました。

     
    7月初旬に開催された卵子学会では、プレゼンテーションスライドにナレーションを録音し、動画を再生する発表形式でした。Zoomよりも内容の伝え方が難しい条件でしたが、当院高度医療研究所の甲斐が学術奨励賞を受賞しておりました。動画の構成、データの示し方等、さすがだなぁと思いました。

     
    次回は11月に米子で生殖医学会が開催されます。オンサイト開催なのかはわからないですが、Web開催となった場合は発表資料をより工夫し、臨みたいと思います。

     
    培養室 河野
  • カテゴリー:研究内容

    2021.07.02

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    我々の研究分野には、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE:エシュレ)とアメリカ生殖医学会(ASRM:アスラム)という2つの大きな国際学会があります。どちらの学会も世界中から1万人以上が参加するマンモス学会で、ESHREはヨーロッパの主要都市の持ち回りで、ASRMはアメリカの主要都市の持ち回りで毎年開催されています。今年のESHREはパリで開催予定だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインに変更され、今週、6/28(月)-7/1(木)の4日間の会期で開催されました。

     
    今年のESHREには高度生殖医療研究所と培養室から1題ずつの演題を投稿しましたが、見事、それぞれ口頭発表とポスター発表に採択されました!!実はこれ、結構すごいことなのです。ESHREの演題採択率は、ポスター発表で40%程度、口頭発表にいたっては12%程度と、かなりの狭き門です。事実、今年の口頭発表に採択された日本人は私を含めて6名だけしかいませんでした。そのような中で、当院の演題が2題とも採択されたことは快挙と言えますし、大変光栄に思います。

     
    私の口頭発表ですが、’’First mitotic spindle formation led by sperm centrosome-dependent microtubule organising centres may cause high incidence of zygotic division errors in humans’’というタイトルで、ヒト受精卵が2細胞期胚に分裂する際の染色体分配メカニズムを解析した内容の発表でした。これは我々が世界で初めて明らかにしたもので、研究内容の詳細は2021.4.23掲載の当院ブログをご覧頂ければと思います。
    https://www.ysyc-yumeclinic.com/blog/2021/04/
     
     
    さて、肝心の発表ですけれども、オンライン開催ということで事前に収録したビデオ映像を流し、その後、ライブで質疑応答を行う形式でした。発表者の持ち時間は発表時間が10分、質疑応答が5分の計15分です。発表ビデオの収録はZOOMというWeb会議サービスを利用し、学会スタッフの指示を仰ぎつつ(もちろん英語です)、スライド発表している様子を収録したのですが、これもまた一苦労。外部からの音が入ってしまったり、私がセリフを噛んでしまったりなどして3回ほど撮り直しを行いました。ビデオ収録が終わってしまえば、あとは気楽に構えていられるかというと大間違いです。英語の聞き取りが苦手な私にとっては、国際学会での質疑応答こそが最大の難関です。例年ですと、現地入りして空港やホテルなどで英語に触れる機会を学会前に持てるので、徐々に自分の頭を英語モードに切り替えて学会に臨むことが出来るのですが、今回の場合はそうはいきません。質疑応答もZOOMを使って行われたのですが、座長から繰り出される4つの質問にかろうじて対応し、なんとか発表を終えました。なかなか疲れましたが、発表内容は高く評価してもらえたようでした。

     
    当院では技術および知識の向上、ひいては生殖医療の発展のために日々研究に励んでおり、その成果を国際学会においても積極的に発信しています。来年のESHREはイタリアのミラノで開催される予定です。2年連続での口頭発表を目指し、現地で発表できるよう研究に邁進したいと思います!

  • カテゴリー:研究内容

    2021.06.09

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    最近は蒸し暑くて堪える日が続いています。今でさえこんなに暑いのに、8月になったらとても耐えられない、なんて思ってしまいますが、そんな心配をよそに私たちの身体は毎年上手く対応してくれます。ホント、我ながら良く出来ていると感心します。素晴らしきかな、人体。

     
    そんな私たちの身体は約37兆個の細胞から出来ており、その種類は270種にも及ぶとされています。膨大な数と種類の細胞から成り立っている人体ですが、元をたどると1個の細胞、つまり受精卵から始まっています。たった1個の細胞から、このように複雑な構造を持つ身体が出来上がるなんて、本当に不思議でなりません。受精卵は最初の分裂で2細胞になり、その後、桑実胚を経て胚盤胞へ発生します。ここまでで、大体7-8回の分裂を経ています。桑実胚を迎える頃になると、それまで同じ性質を持っていた細胞たちが、徐々に異なった性質を持つようになります。そして胚盤胞になると、胎児になる細胞群と胎盤になる細胞群の2種類の細胞群に分かれます。しかしながら、どのようなメカニズムで2種類の細胞に枝分かれするのか、未だに解明されていません。そのような状況ですから、複雑な臓器や構造がどのように形作られて私たちの身体が出来上がっていくのか、そのメカニズムが完全に解明されるまでにはまだまだ随分と時間がかかりそうです。まさに神秘のベールに包まれている訳です。

     
    私はその一端を少しでも垣間見ようと、受精卵の内部で起きている様々な生命現象を顕微鏡で観察しようと試みています。その中でも、初期胚の発生を生きたまま観察することが可能なライブセルイメージング解析は、当院の強力な武器の一つになっています。これまでに取得したデータをいくつか発表してきましたが、その度に感じるのが映像の持つ確かな説得力です。百聞は一見に如かずという言葉の通り、生命現象を映像で示すということは、どんな論拠を並べるよりも圧倒的な説得力を持っています。そのような解析を通じて、少しでも“いのちのはじまり”の神秘を解き明かすことが出来ればと思っています。

     
    さて、前置きが長くなりましたが、生命科学・医科学映像を制作する企業が開催する上映会にゲストとして招かれることになりました。とても興味深い内容で、私自身、とても楽しみにしています。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。参加をご希望の方は事前申し込みが必要なようですのでご注意下さい。

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.06.07

    例年よりもかなり早い梅雨入りが騒がれておりましたが、関東ではようやく雨が降ったりやんだりし始めました。じめじめした日々は苦手なので、できるだけ早く終わってほしいと思います。

     
    横浜でワクチンの温度管理を誤り、効果の損なわれたワクチンが大勢に接種され、また廃棄になったとニュースで騒がれておりました。会見担当者(管理責任者?)によると「冷蔵庫のコンセントが抜けており、ブザーが鳴らなかったので誰も気づかなかった」とのことです。冷蔵保管されていたはずのワクチンであれば、ワクチン希釈の際に冷蔵庫から取り出した際にわかると思いますが、厚手のゴム手袋をしていた等、温度を感じにくい条件があったのでしょうか。いずれにせよ、現場の状況を詳細に理解していないと思われる担当者のコメントでは実状が伝わらず、解決策を講じることもできません。少なくとも2か所の表現を修正すべきと考えられます。

     
    修正点その①

    ×(冷蔵庫の)コンセントが抜けており、ブザーがならなかった

    →〇(冷蔵庫の)稼働が止まっていることに誰も気づかなかった

     
    修正点その②

    ×ブザーが鳴らなかったので誰も気づかなかった

    →〇有効なチェック体制を構築していなかった

     
    起こってしまった事故の原因がどこにあるのかわからず、再発防止に繋がらないようなコメントだったので、横浜市の皆さまはいっそう不安になったのではないでしょうか。

    読売新聞の記事では、現在までに全国で約7000回分のワクチンが廃棄になったそうです。全国でワクチン接種者は1000万人を超えたそうですので、廃棄率は約0.07%になります。上からの急な指示で慌てて対応せざるを得ない状況となっている中、工夫を重ねて事故防止に尽力している現場の方に頭が下がります。指示を出す自治体がリスクヘッジを行えていないように思えますので、事故情報を共有し、「〇〇に気づかなかった」などとよくわからない言い訳をすることがないように策を講じていただきたいものです。

    一方で、高齢者ワクチン接種のペースは一向に上がらない中、ファイザー社製ワクチンの接種対象下限年齢が16歳から12歳に引き下げられたようです。国内では10代感染者に死亡例は出ておらず、ワクチン接種の副反応の方が子供達にはデメリットのように感じますが、接種対象を引き下げるべき強い根拠が国にはあるのでしょう。根拠が明らかに示された場合、我が家の長男、次男に接種を勧めようと思います。

     
    話は変わりますが、先日「ガイアの夜明け」という番組で、システム開発に取り組んでいる医師の話がありました。食道がんなど判定が難しい診断をAIが補助し、見逃しを少なくするシステムを開発しているそうですが、通常の診察も行いながらシステム開発の会社を立ち上げたそうです。昼も夜もない相当な激務であると思います。先生ご自身がシステム開発に着手した理由は、「現場の人間が一番わかっているから」だそうです。

    全くもってその通りだと思いました。学会等で企業ブースを見て回ると、色々な業者さんが声をかけてくださり、新製品を紹介してくださいます。しかしながら、既存品をわずかに変更した製品が多く見られ、「そこじゃないんだよね…」というところを変更した製品も少なからずあります。現場とメーカーの視点の乖離を最近は特に感じ、新製品の採用に中々至らなくなってきています。このため、最適な技術提供のために必要な機材を、私たち自身で作成する機会も増えてきています。

    YSYCでは、無麻酔採卵を可能にした極細の採卵針を筆頭に、クリニック専用品を作成・使用しています。あまり外部に情報として出すことはありませんでしたが、折角ですので培養室で特注した顕微操作関連製品をいくつか紹介します。

     
    YSYC培養室秘伝その①:PIEZO-ICSI用ピペット

    PIEZO-ICSIでは先端がフラットなガラスピペットを使用しますが、当院ではさらに熱処理を加え、ピペット先端の鋭利な部分を除去しています。これによりICSI時に卵子にかかるストレスの軽減に努めています。

     
    YSYC培養室秘伝その②:Zona free oocyte用Holdingピペット
    採卵時に透明帯(卵子の殻)が外れてしまった場合、内径を極端に狭くしたHoldingピペット(卵子の左側のガラスピペットのこと)を使用しています。これにより殻を失くした卵子が、ICSIの穿刺時に傷んでしまうことがほとんどなくなりました。
     
     
     
    上記製品については、当培養室が発案・技術協力を行っているため、特に患者様の費用的な負担を増やすことなく運用ができております。今後も現場で活用できる製品の開発を継続していきたいです。

     
    培養部 河野
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