医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • カテゴリー:研究内容

    2021.07.02

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    我々の研究分野には、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE:エシュレ)とアメリカ生殖医学会(ASRM:アスラム)という2つの大きな国際学会があります。どちらの学会も世界中から1万人以上が参加するマンモス学会で、ESHREはヨーロッパの主要都市の持ち回りで、ASRMはアメリカの主要都市の持ち回りで毎年開催されています。今年のESHREはパリで開催予定だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインに変更され、今週、6/28(月)-7/1(木)の4日間の会期で開催されました。

     
    今年のESHREには高度生殖医療研究所と培養室から1題ずつの演題を投稿しましたが、見事、それぞれ口頭発表とポスター発表に採択されました!!実はこれ、結構すごいことなのです。ESHREの演題採択率は、ポスター発表で40%程度、口頭発表にいたっては12%程度と、かなりの狭き門です。事実、今年の口頭発表に採択された日本人は私を含めて6名だけしかいませんでした。そのような中で、当院の演題が2題とも採択されたことは快挙と言えますし、大変光栄に思います。

     
    私の口頭発表ですが、’’First mitotic spindle formation led by sperm centrosome-dependent microtubule organising centres may cause high incidence of zygotic division errors in humans’’というタイトルで、ヒト受精卵が2細胞期胚に分裂する際の染色体分配メカニズムを解析した内容の発表でした。これは我々が世界で初めて明らかにしたもので、研究内容の詳細は2021.4.23掲載の当院ブログをご覧頂ければと思います。
    https://www.ysyc-yumeclinic.com/blog/2021/04/
     
     
    さて、肝心の発表ですけれども、オンライン開催ということで事前に収録したビデオ映像を流し、その後、ライブで質疑応答を行う形式でした。発表者の持ち時間は発表時間が10分、質疑応答が5分の計15分です。発表ビデオの収録はZOOMというWeb会議サービスを利用し、学会スタッフの指示を仰ぎつつ(もちろん英語です)、スライド発表している様子を収録したのですが、これもまた一苦労。外部からの音が入ってしまったり、私がセリフを噛んでしまったりなどして3回ほど撮り直しを行いました。ビデオ収録が終わってしまえば、あとは気楽に構えていられるかというと大間違いです。英語の聞き取りが苦手な私にとっては、国際学会での質疑応答こそが最大の難関です。例年ですと、現地入りして空港やホテルなどで英語に触れる機会を学会前に持てるので、徐々に自分の頭を英語モードに切り替えて学会に臨むことが出来るのですが、今回の場合はそうはいきません。質疑応答もZOOMを使って行われたのですが、座長から繰り出される4つの質問にかろうじて対応し、なんとか発表を終えました。なかなか疲れましたが、発表内容は高く評価してもらえたようでした。

     
    当院では技術および知識の向上、ひいては生殖医療の発展のために日々研究に励んでおり、その成果を国際学会においても積極的に発信しています。来年のESHREはイタリアのミラノで開催される予定です。2年連続での口頭発表を目指し、現地で発表できるよう研究に邁進したいと思います!

  • カテゴリー:研究内容

    2021.06.09

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    最近は蒸し暑くて堪える日が続いています。今でさえこんなに暑いのに、8月になったらとても耐えられない、なんて思ってしまいますが、そんな心配をよそに私たちの身体は毎年上手く対応してくれます。ホント、我ながら良く出来ていると感心します。素晴らしきかな、人体。

     
    そんな私たちの身体は約37兆個の細胞から出来ており、その種類は270種にも及ぶとされています。膨大な数と種類の細胞から成り立っている人体ですが、元をたどると1個の細胞、つまり受精卵から始まっています。たった1個の細胞から、このように複雑な構造を持つ身体が出来上がるなんて、本当に不思議でなりません。受精卵は最初の分裂で2細胞になり、その後、桑実胚を経て胚盤胞へ発生します。ここまでで、大体7-8回の分裂を経ています。桑実胚を迎える頃になると、それまで同じ性質を持っていた細胞たちが、徐々に異なった性質を持つようになります。そして胚盤胞になると、胎児になる細胞群と胎盤になる細胞群の2種類の細胞群に分かれます。しかしながら、どのようなメカニズムで2種類の細胞に枝分かれするのか、未だに解明されていません。そのような状況ですから、複雑な臓器や構造がどのように形作られて私たちの身体が出来上がっていくのか、そのメカニズムが完全に解明されるまでにはまだまだ随分と時間がかかりそうです。まさに神秘のベールに包まれている訳です。

     
    私はその一端を少しでも垣間見ようと、受精卵の内部で起きている様々な生命現象を顕微鏡で観察しようと試みています。その中でも、初期胚の発生を生きたまま観察することが可能なライブセルイメージング解析は、当院の強力な武器の一つになっています。これまでに取得したデータをいくつか発表してきましたが、その度に感じるのが映像の持つ確かな説得力です。百聞は一見に如かずという言葉の通り、生命現象を映像で示すということは、どんな論拠を並べるよりも圧倒的な説得力を持っています。そのような解析を通じて、少しでも“いのちのはじまり”の神秘を解き明かすことが出来ればと思っています。

     
    さて、前置きが長くなりましたが、生命科学・医科学映像を制作する企業が開催する上映会にゲストとして招かれることになりました。とても興味深い内容で、私自身、とても楽しみにしています。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。参加をご希望の方は事前申し込みが必要なようですのでご注意下さい。

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.06.07

    例年よりもかなり早い梅雨入りが騒がれておりましたが、関東ではようやく雨が降ったりやんだりし始めました。じめじめした日々は苦手なので、できるだけ早く終わってほしいと思います。

     
    横浜でワクチンの温度管理を誤り、効果の損なわれたワクチンが大勢に接種され、また廃棄になったとニュースで騒がれておりました。会見担当者(管理責任者?)によると「冷蔵庫のコンセントが抜けており、ブザーが鳴らなかったので誰も気づかなかった」とのことです。冷蔵保管されていたはずのワクチンであれば、ワクチン希釈の際に冷蔵庫から取り出した際にわかると思いますが、厚手のゴム手袋をしていた等、温度を感じにくい条件があったのでしょうか。いずれにせよ、現場の状況を詳細に理解していないと思われる担当者のコメントでは実状が伝わらず、解決策を講じることもできません。少なくとも2か所の表現を修正すべきと考えられます。

     
    修正点その①

    ×(冷蔵庫の)コンセントが抜けており、ブザーがならなかった

    →〇(冷蔵庫の)稼働が止まっていることに誰も気づかなかった

     
    修正点その②

    ×ブザーが鳴らなかったので誰も気づかなかった

    →〇有効なチェック体制を構築していなかった

     
    起こってしまった事故の原因がどこにあるのかわからず、再発防止に繋がらないようなコメントだったので、横浜市の皆さまはいっそう不安になったのではないでしょうか。

    読売新聞の記事では、現在までに全国で約7000回分のワクチンが廃棄になったそうです。全国でワクチン接種者は1000万人を超えたそうですので、廃棄率は約0.07%になります。上からの急な指示で慌てて対応せざるを得ない状況となっている中、工夫を重ねて事故防止に尽力している現場の方に頭が下がります。指示を出す自治体がリスクヘッジを行えていないように思えますので、事故情報を共有し、「〇〇に気づかなかった」などとよくわからない言い訳をすることがないように策を講じていただきたいものです。

    一方で、高齢者ワクチン接種のペースは一向に上がらない中、ファイザー社製ワクチンの接種対象下限年齢が16歳から12歳に引き下げられたようです。国内では10代感染者に死亡例は出ておらず、ワクチン接種の副反応の方が子供達にはデメリットのように感じますが、接種対象を引き下げるべき強い根拠が国にはあるのでしょう。根拠が明らかに示された場合、我が家の長男、次男に接種を勧めようと思います。

     
    話は変わりますが、先日「ガイアの夜明け」という番組で、システム開発に取り組んでいる医師の話がありました。食道がんなど判定が難しい診断をAIが補助し、見逃しを少なくするシステムを開発しているそうですが、通常の診察も行いながらシステム開発の会社を立ち上げたそうです。昼も夜もない相当な激務であると思います。先生ご自身がシステム開発に着手した理由は、「現場の人間が一番わかっているから」だそうです。

    全くもってその通りだと思いました。学会等で企業ブースを見て回ると、色々な業者さんが声をかけてくださり、新製品を紹介してくださいます。しかしながら、既存品をわずかに変更した製品が多く見られ、「そこじゃないんだよね…」というところを変更した製品も少なからずあります。現場とメーカーの視点の乖離を最近は特に感じ、新製品の採用に中々至らなくなってきています。このため、最適な技術提供のために必要な機材を、私たち自身で作成する機会も増えてきています。

    YSYCでは、無麻酔採卵を可能にした極細の採卵針を筆頭に、クリニック専用品を作成・使用しています。あまり外部に情報として出すことはありませんでしたが、折角ですので培養室で特注した顕微操作関連製品をいくつか紹介します。

     
    YSYC培養室秘伝その①:PIEZO-ICSI用ピペット

    PIEZO-ICSIでは先端がフラットなガラスピペットを使用しますが、当院ではさらに熱処理を加え、ピペット先端の鋭利な部分を除去しています。これによりICSI時に卵子にかかるストレスの軽減に努めています。

     
    YSYC培養室秘伝その②:Zona free oocyte用Holdingピペット
    採卵時に透明帯(卵子の殻)が外れてしまった場合、内径を極端に狭くしたHoldingピペット(卵子の左側のガラスピペットのこと)を使用しています。これにより殻を失くした卵子が、ICSIの穿刺時に傷んでしまうことがほとんどなくなりました。
     
     
     
    上記製品については、当培養室が発案・技術協力を行っているため、特に患者様の費用的な負担を増やすことなく運用ができております。今後も現場で活用できる製品の開発を継続していきたいです。

     
    培養部 河野
  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.05.16

    蔓延防止措置、緊急事態宣言でも相変わらず人出の絶えない状況が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。立て込んでおり、なかなかブログをアップすることができませんでした。最近大きな出来事が続いたので、その内容を報告させていただきます。

     
    1.投稿論文のアクセプト

    2015年より続けております、巨大卵子(Giant oocyte)に関する研究論文が学術誌に採択されました。「アクセプト」とは学術誌に投稿した論文について、厳密な審査の結果、研究内容が承認・受理されたことを表します。アクセプトされた論文は学術誌やインターネット上に公開され、多くの研究者・医療従事者が見ることが出来るようになります。

    Giant oocyteはごく稀に採卵時に得られる、通常の倍以上の染色体を有する卵子です。異常卵子として扱われますので、当然ながら治療に用いることができません。このGiant oocyteを何とか治療に応用できないものかと研究を続けておりましたが、採卵率は全卵子中の約0.3%であり、研究対象としては非常に厳しいものでした。しかしながら、患者様のご厚意により検討に必要な数が集まり、論文としてデータをまとめることができました。ご協力いただきました患者様にこの場を借りて御礼を申し上げます。

    Giant oocyteの治療への利用は、現段階ではかなり工夫が必要であることがわかりました。また、解析可能な検体の数も限定されますので、これを機に世界中でGiant oocyteの研究が広まってくれれば、と期待しております。もちろん当院でも引き続き検討を重ねてまいりますので、研究が進捗すれば新たに論文としてデータをまとめようと思います。

    もし興味がございましたら、論文のリンクを記載しておきますのでご覧ください。

    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/rmb2.12378
     
     
    2.博士号取得

    2017年に社会人入学をした麻布大学獣医学研究科を、上記の投稿論文アクセプトに伴い卒業でき、博士号を取得することができました。受験勉強から始まり学業と仕事の両立に取り組んで参りましたが、ようやく一息つけるところにたどり着きました。

    論文の作成過程において大学教授を始め、多くの方々に学びの機会を与えていただきました。データはただの数字でしかありませんが、視点によって色々な解釈ができます。手を動かしてデータを出すことも大事なことですが、それよりも手元にあるデータに適切な解釈を与えることが最も重要であると思います。データが不十分なまま良い、悪いと物事を判断すると、現政府のコロナ感染症対策のようになってしまいます。これは当院の培養成績についても同じことが言えます。

    過去のデータ、最新の研究データを踏まえ、患者様の治療が実を結ぶように最大限のお手伝いをさせていただこうと思います。

     
    3.WEBセミナー講師初体験

    3月27日に凍結融解液に関するWEBセミナーの講師をさせていただきました。オンライン配信は初の経験でしたが、企業の担当者も初の経験とのことであり、時間をかけて細かいやり取りを重ねて本番を迎えました。かなり多くの方がご参加くださり、LIVEでの質疑応答では多くの質問をいただき、非常に充実した時間を過ごさせていただきました。

    凍結融解液は、不妊治療において非常に重要な役割を担います。卵子、胚の体外操作では採卵、受精、凍結可能な時期まで胚を成長させるために多くの患者様や病院スタッフの苦労があり、その最後を締めくくるのが凍結融解過程になります。臨床成績を左右する大切な部分になりますので、どの施設でも使い慣れた従来品の見直し・変更の検討は躊躇すると思います。当院ではこれまでに多くの動物試験、廃棄胚を用いた検討を行いましたが、その過程および臨床利用による結果を中心に話をしました。具体的にはマニアックな話になりますので割愛しますが、これまでと同等以上の良好な成績が得られていますので、今後妊娠成績のさらなる向上が期待できます。

     
    長々とした文章になりましたが、私にとって非常に大きな経験となった出来事をご紹介させていただきました。5月末、7月の学会発表、8月のワークショップ講師と予定がどんどん決まってきておりますが、しっかり誠実に仕事をしていきたいと思います。

     
    培養部 河野 博臣
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