医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.12.22

    季節外れの暖かさがようやく収まり、寒さが訪れるようになってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。スケジュールが立て込んでおり報告が遅くなりましたが、先日米子で開催されました第66回生殖医学会でデータを発表してきました。今回は、顕微授精の際、卵子の核である「紡錘体」を観察することが有効であるかどうか、4年分のデータを集計して報告してきました。今回のブログの内容は少しわかりにくいかもしれません。よくマニアックだと言われますが、書きます。できる限りご理解いただけるように努力します。

     
    「紡錘体」は極体(成熟卵子の細胞外にある小さな細胞片)のすぐ近くに存在するとされ、顕微授精時は極体を避けて穿刺することが常識でした。しかしながら、必ずしも「紡錘体」は極体と近接しないことが論文報告などにより明らかになってきました。

     
     
    卵子紡錘体の位置とその分類(偏光視野で白く光っているのが紡錘体)

     
    「紡錘体」は卵子細胞の中に存在しますが、通常の顕微鏡観察では非常に見つけづらいです(見つけられるという報告もありますが、全ての卵子には当てはまらないと考えます)。そこで、「紡錘体」を発見するための特殊な顕微鏡(偏光顕微鏡)を用いた顕微授精(SL-ICSI, 2016年12月6日BLOG参照)を導入し、当院で実施する顕微授精のスタンダードとしました。4年間分のデータを解析した結果、「紡錘体」が極体のすぐ近くに存在する確率は約40%であり、加齢とともに紡錘体の位置は極体から離れて存在する傾向であることがわかりました。

     
     
     
    紡錘体位置のずれる割合(上)と年齢相関(下)

     
    SL-ICSI導入前では、加齢に伴い顕微授精の受精率が低下する傾向にありました。一方、SL-ICSI導入後では、顕微授精受精率と年齢相関は認められなくなりました。つまり、SL-ICSIは卵子紡錘体へのストレスを避けることができ、年齢因子による受精のブレを解消できる手法であることが明らかとなりました。当院では、他院で治療が上手くいかなかったり、あるいは年齢により治療を断られた患者様が多くいらっしゃいます。このため、体外受精治療のスタートラインである「受精」をしっかりと安定させさものとする技術は、当院で治療を受けられる多くの患者様にメリットをもたらすものと考えます。

     
     
    SL-ICSI導入前後の顕微授精受精率-年齢相関( 青:SL-ICSI導入前、オレンジ:SL-ICSI導入後)

     
    COVID-19が蔓延し、最近まではオンライン学会がほとんどでした。今回は久しぶりに実地で開催されましたので、他施設の先生方との質疑応答を通した議論、交流を楽しみにしておりました。ある施設の先生から早速質問がありましたが、「こんな(に改善する)ことはあり得ない」という、質問というよりはイチャモンに近いものでした(笑)。培養士は職業上、研究者としての視点を持ち合わせている先生が多いですし、そうあるべきであると考えます。得られたデータについては、何故そのようなことが結果になったか、様々な根拠を元に客観的に考察します。反対に「あり得ない」という根拠のない感情論から解析を始めることは、視点を曇らせ建設的な考察ができなくなります。顕微授精の際に紡錘体など気にしたことがないのかもしれませんが、質疑応答の貴重な時間が失われ、不完全燃焼となってしまいました。せめて、私たちの技術に対する誉め言葉として受け取っておこうと思います。

     
    学会会場では、他施設の培養士の方々と情報交換、議論することができました。この時間が楽しくて、このために学会発表をしています。有用な情報、技術をたくさん持ち帰ってくることができましたので、よい結果につなげられるように取捨選択していきます。

     
    培養室 河野 博臣
  • カテゴリー:研究内容

    2021.11.17

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    鳥取県米子市で11/11(木)-12(金)にかけて開催された第66回日本生殖医学会学術講演会に参加してきました。私ごとですが、米子では学生時代の8年間を過ごし、社会人となって一旦離れた後、再び戻ってさらに7年間を過ごしました。研究者人生をスタートさせた地であり、また生殖医療の道を歩むきっかけになった地でもあります。そのような第二の故郷と呼べる土地での開催とあって、いつも以上に心踊る学会参加となりました。

     
    また、新型コロナウイルス感染拡大以降、学会もオンライン開催が続いていましたが、今回は久々の現地開催となりました。オンラインの学会は手軽で良い反面、臨場感に欠けて緊張感がなく、なんとなく不完全燃焼のまま学会終了を迎えてしまうことが続いていたので、この点からも非常に楽しみな学会でした。

     
    当院からは6名が参加し、山下院長、河野培養室長、そして私の3名が発表を行いました。私は「ヒトの第一卵割時における紡錘体形成は精子中心体に依存する微小管形成中心によって導かれる」という演題で、初期胚発生過程で得られた新知見について発表したのですが、質疑応答での聴衆とのやりとりや、発表後にも会場の外で引き続く質問者とのディスカッションが大変心地よく、現地開催の良さを改めて感じました。他施設の研究者とも様々な情報交換ができ、久しぶりに学会の醍醐味を存分に味わいましたし、研究へのモチベーションをさらに高めることができました。

     
    学会終了後には三朝温泉に一泊し、大山みるくの里、三徳山投入堂、倉吉の白壁土蔵群、鳥取砂丘と、鳥取観光を満喫して帰路につきました。宿泊した温泉旅館では、趣のある客室に素晴らしい食事、そして立派な温泉を堪能しましたが、おそらく自腹では到底味わうことの出来ないものばかりでした。院長に感謝。

     
    なかなか皆様、鳥取県に目を向けることは少ないかと思いますが、自然豊かで、海の幸、山の幸に恵まれた良い土地です。人口最少県ですので、密にもなりにくく、お忍び旅行にもピッタリですし、ディープなスポットも満載です。機会がございましたら是非とも足をお運び下さいませ!

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2021.08.20

    関東ではようやく晴日が見られるようになってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

     
    報告が遅くなってしまいましたが、7月に開催された日本受精着床学会で「短時間媒精における媒精時間と使用培養液の影響について」の内容で当院のデータ発表をしてきました。会場は神戸国際会議場でしたが、現地に赴かずZoom発表が可能でしたので、今回はZoomで参加させていただきました。

    当院では、ふりかけ法(C-IVF)で受精しなかった卵子を顕微授精(ICSI)により救済する「Rescue-ICSI」について、かなりの時間をかけて検討を重ねてきました。Rescue-ICSI成功のポイントは、施行までの「時間」です。C-IVF後にできるだけ早く不受精卵子を見極めることが重要ですが、精子侵入の有無を正確に判断するには時間を要します。しかしながら、判断に時間をかけすぎると、時間経過とともに卵子の質が低下してしまいます。ICSIに最適な時間は、(成熟卵子で得られた場合)採卵から4~5時間と言われています。これは当然Rescue-ICSIにも当てはまり、採卵から時間が経ちすぎてしまうと、Rescue-ICSIの効果が低くなってしまいます。無駄な時間をかけずに素早くRescue-ICSIをしたい一方で、C-IVFの時間を短縮してしまうと、C-IVFの受精率そのものが落ちてしまうという側面もあります。

    そこで、受精率を下げずにC-IVFを短時間で完了できる培養液について検討しました。添付資料にある培養液Bは、活性酸素除去効果がある抗酸化剤を豊富に含んでおり、受精現象に対する工夫が凝らされた製品です。培養液Bを使用することで、C-IVFの時間を6時間→3時間に短縮しても受精率が低下せず、さらに胚の成長にも影響しないことが分かりました。

    以上のことから、C-IVFの5時間後、つまり最初からICSIを選択した場合と同程度の時間でRescue-ICSIを施行する技術が確立しました。

     
    BLG2021.8.20用

     
    この内容について、Zoomを通じて発表させていただきました。

    会場からいくつか質問が来ましたが、残念ながら本検討のコンセプトが十分に伝わったとは言えないものでした。Zoom発表だと発表者の顔が見えず、スライドが淡々と流れているようにも見えますので、LIVE発表のように強調したいところがうまく伝わらなかったのかもしれません。説明資料や言い方などをZoom発表用に工夫しなければならないと思いました。

     
    7月初旬に開催された卵子学会では、プレゼンテーションスライドにナレーションを録音し、動画を再生する発表形式でした。Zoomよりも内容の伝え方が難しい条件でしたが、当院高度医療研究所の甲斐が学術奨励賞を受賞しておりました。動画の構成、データの示し方等、さすがだなぁと思いました。

     
    次回は11月に米子で生殖医学会が開催されます。オンサイト開催なのかはわからないですが、Web開催となった場合は発表資料をより工夫し、臨みたいと思います。

     
    培養室 河野
  • カテゴリー:研究内容

    2021.07.02

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    我々の研究分野には、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE:エシュレ)とアメリカ生殖医学会(ASRM:アスラム)という2つの大きな国際学会があります。どちらの学会も世界中から1万人以上が参加するマンモス学会で、ESHREはヨーロッパの主要都市の持ち回りで、ASRMはアメリカの主要都市の持ち回りで毎年開催されています。今年のESHREはパリで開催予定だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインに変更され、今週、6/28(月)-7/1(木)の4日間の会期で開催されました。

     
    今年のESHREには高度生殖医療研究所と培養室から1題ずつの演題を投稿しましたが、見事、それぞれ口頭発表とポスター発表に採択されました!!実はこれ、結構すごいことなのです。ESHREの演題採択率は、ポスター発表で40%程度、口頭発表にいたっては12%程度と、かなりの狭き門です。事実、今年の口頭発表に採択された日本人は私を含めて6名だけしかいませんでした。そのような中で、当院の演題が2題とも採択されたことは快挙と言えますし、大変光栄に思います。

     
    私の口頭発表ですが、’’First mitotic spindle formation led by sperm centrosome-dependent microtubule organising centres may cause high incidence of zygotic division errors in humans’’というタイトルで、ヒト受精卵が2細胞期胚に分裂する際の染色体分配メカニズムを解析した内容の発表でした。これは我々が世界で初めて明らかにしたもので、研究内容の詳細は2021.4.23掲載の当院ブログをご覧頂ければと思います。
    https://www.ysyc-yumeclinic.com/blog/2021/04/
     
     
    さて、肝心の発表ですけれども、オンライン開催ということで事前に収録したビデオ映像を流し、その後、ライブで質疑応答を行う形式でした。発表者の持ち時間は発表時間が10分、質疑応答が5分の計15分です。発表ビデオの収録はZOOMというWeb会議サービスを利用し、学会スタッフの指示を仰ぎつつ(もちろん英語です)、スライド発表している様子を収録したのですが、これもまた一苦労。外部からの音が入ってしまったり、私がセリフを噛んでしまったりなどして3回ほど撮り直しを行いました。ビデオ収録が終わってしまえば、あとは気楽に構えていられるかというと大間違いです。英語の聞き取りが苦手な私にとっては、国際学会での質疑応答こそが最大の難関です。例年ですと、現地入りして空港やホテルなどで英語に触れる機会を学会前に持てるので、徐々に自分の頭を英語モードに切り替えて学会に臨むことが出来るのですが、今回の場合はそうはいきません。質疑応答もZOOMを使って行われたのですが、座長から繰り出される4つの質問にかろうじて対応し、なんとか発表を終えました。なかなか疲れましたが、発表内容は高く評価してもらえたようでした。

     
    当院では技術および知識の向上、ひいては生殖医療の発展のために日々研究に励んでおり、その成果を国際学会においても積極的に発信しています。来年のESHREはイタリアのミラノで開催される予定です。2年連続での口頭発表を目指し、現地で発表できるよう研究に邁進したいと思います!

PAGETOP

医療法人社団 煌の会 山下湘南夢クリニック 院長:山下直樹
〒251-0025 神奈川県藤沢市鵠沼石上1-2-10 ウェルビーズ藤沢4F
TEL:0466-55-5011 FAX:0466-55-5012