医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • カテゴリー:YSYCの日常

    2022.11.19

    だんだんと寒さが増してきた今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

    先日パシフィコ横浜で開催された日本生殖医学会に参加してきました。

     
    生殖医学会は生殖医療に携わる者にとって国内で最大規模の学会です。教育講演では毎年著名な先生が最先端のデータに基づき授業してくださいます。全国の培養士も集結します。従って他施設の医師、培養室長、培養士、業者さんなど色々な方を捕まえて有用な情報を集めまくるので、通常業務中より休む時間はありません(笑)。今回も患者様にとって有益な技術や情報を山ほど仕入れてきましたので、必要に応じて提供していきます。

     
    今回の学会では、タイムラプスインキュベーターが新鮮分割胚移植において有効であるかどうかを検討したデータを発表してきました。

     
    当院で分割胚移植を経験した患者様は、移植前に培養士から『direct cleavage』(以後DCと表記)という現象について説明を聞いたことがあるかもしれません。通常、細胞は1つの細胞から2つの細胞に分裂します。核(染色体)の複製は一度に一つしかできないので、2つの細胞へ染色体がそれぞれ分配されることで1回の細胞分裂が終了するためです。しかしながら、タイムラプスインキュベーターを使用すると、1つの細胞から3つ以上の細胞に分裂する現象が認められることがあります。これがDCとよばれる現象です。

     

    【DCの様子】

     
    DCを起こした細胞は通常の胚と比較して胚盤胞へ育つ確率は低くなります。胚盤胞へ育つ確率が低くなる=DCを起こした胚は着床する確率が低くなるということです。実際にDCを起こした胚を分割胚移植した成績を見ると、非常に低い成績であることが分かりました。

     
    DC-BL

    【通常分割胚(C区)とDCを起こした胚(DC区)の胚盤胞培養成績】

     
    DC-ET

    【通常分割胚(C区)とDCを起こした胚(DC区)の分割胚移植成績】

     
    しかしながら、DCを起こした胚をそのまま培養し、胚盤胞で凍結が出来た場合、その移植成績は通常の胚盤胞と同等であることがわかりました。つまり、DCを起こした胚を胚盤胞まで培養することで、着床する力があるかどうかをある程度見極めることが可能であるということです。

     
    DC-BT

    【通常分割胚(C区)とDCを起こした胚(DC区)に由来する胚盤胞の移植成績】

    表中の『GS』が胎嚢まで確認できた患者様の数を表しています。

     
    このため、分割胚移植を予定している場合でも、DCが認められた際は胚盤胞培養をお勧めしています。DCは移植直前にならないと判定が難しい場合もあるため、予定していた移植が急にキャンセルとなることもあります。しかしながら、少ない移植回数でご卒業していただくことが重要ですので、移植の可否の判断は非常に大切だと考えています。

     
    DCの判定は通常の定時観察では見極めることが困難ですので、タイムラプスインキュベーターを使用した連続観察が必須になります。タイムラプスインキュベーターは胚盤胞までの長期培養をされる場合に有効ですが、上記のように分割胚移植などの短い培養においても非常に有用であることがお分かりいただけるかと思います。

     
    これから新たに体外受精治療を受けられる患者様も、タイムラプスインキュベーターを是非ご利用ください。詳細については当院培養士を捕まえてご質問いただければと思います。

     
    培養室 河野
  • カテゴリー:研究内容

    2022.11.11

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    パシフィコ横浜で11/3(木)-4(金)にかけて開催された第67回日本生殖医学会学術講演会で発表してきました。

    演題名は「超解像イメージングにより捉えたヒト受精卵における精子尾部先端のひげ根様構造」です。簡単に説明すると、ヒト精子のシッポ(尾部)が受精後に卵子の中で根を張ったような状態になっているのを発見しました、という内容です。

     
    受精において精子が果たす主な役割としては、「父親の遺伝情報」、「卵子活性化因子」、「中心小体」を卵子内に持ち込むことが挙げられます。そのミッションを遂行するため(卵子に到達するため)、精子は尾部を使って卵子まで泳ぐわけですが、受精してしまえば尾部は不要になってしまいます。いや、不要と考えられてきました。

    精子尾部を動かすエネルギーを産生するミトコンドリアが受精後に分解されるメカニズムはよく研究されていますが、精子尾部自身がどのように分解されるかについては現在のところ情報が限られています。今回、私は超解像イメージング技術によって、受精後の精子尾部がどのようになっているのかを詳細に解析しました。

    その結果、卵子内に入った精子尾部の先端は複数に枝分かれし、まるで植物の「ひげ根」のようになっていることが分かりました。それはまるで、精子尾部が卵子内に根付いて、父親の遺伝情報をアンカーしているようにも見えました。このような報告は私の知る限りでは世界初です。

    以上の結果をまとめ、高精細な3D画像データを用いて発表したところ、これがなかなかのインパクトだったようで、座長の先生から「センセーショナルな発表」と評されました。大変嬉しいお言葉で、額面通りに受け取らせて頂きました。

     
     
    今回発見した「精子尾部のひげ根様構造」ですが、生物学的な意義は正直まだ分かりません。ただ、これまでの報告から少なくとも受精そのものには関与しないだろうと考えています。根拠として、まだ顕微授精が実施され始めて間もない頃、精子尾部を半分に切断して卵子内に注入しても受精することが論文で報告されました。このことから精子尾部の先端が無くても受精は起こるということが分かります。

    ちなみに現在では精子に不動化という処置を行って、尾部もそのまま頭部と一緒に注入するのがスタンダードです。しかしながら、マウス(げっ歯類)の場合には尾部を切断して頭部のみを注入して顕微授精します。この違いは先に述べた「中心小体」に関連するのですが、この話は機会があればまた。

     
    ただ、最近は精子尾部にも父親に由来する因子が含まれているのではないか?などと言われ始めており、ひょっとするとそれらの因子は胚の発育に関与していて、その因子を卵子内に留めるために、「精子尾部のひげ根様構造」が役割を果たしていれば面白いな、などと妄想しております。

    「受精後は不要と考えられていた精子尾部に、実は重要なミッションが残されていた!!」なんて、ロマンを感じませんか?

    誰も知らない現象なのですから、発想は自由ですし、それが正しいかどうかを解き明かす事こそ研究の醍醐味です。

    どこまで明らかにできるかは分かりませんが、来年には成果をまとめて論文に発表できればと考えています。

     
    今回の学会は完全に現地開催ということで、久しぶりに色々な方々と対面でお会いすることができました。質疑応答のやりとりなどは、やっぱりオンラインだと物足りないんですよね。。おかげで色々な情報を仕入れることができましたし、モチベーションもかなり上がりました。

    そしてクラウドファンディングでお世話になった方々とも直接ご挨拶することができ、久々に充実した学会期間を過ごすことができました。

     
    また感染が拡大しつつあるようです。手洗い・うがい、マスク着用等、今一度気を引き締めてまいりましょう!
  • カテゴリー:YSYCの日常

    2022.09.18

    こんにちは!培養士の越智です。

     
    朝夕には少し肌寒さを感じるようになり、秋の気配を感じる季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

     
     
    YSYCでは先日、第4回目になるネイチャーツアーが開催され、日本の最北端・稚内と利尻島を訪れました。

    北海道といえば晴れの日が少ないことでも有名ですが、今回はお天気に非常に恵まれ、むしろ汗ばむような夏日となりました。

    おかげで、稚内でも利尻島でも映える写真をたくさん撮ることができましたので、いくつか宗谷地方の名所をご紹介させていただきます。

     
     
    ①白い道

    宗谷丘陵から日本海へ向かって真っすぐ伸びる日本最北端のシェルロードです。

    雲一つない日には、奥の利尻富士まで見通すことができるそうです。

     
     
     
    ②ノシャップ岬

    イルカのモニュメントが有名な夕日の名所です。茜色に染まる空と雲がとても幻想的でした

     
     
     
     
    ③利尻富士

    皆様ご存じ北海道銘菓「白い恋人」のパッケージの風景が広がっています。

    実は、利尻富士の姿がまるでスイスの山々に似ていることから採用されたようです。

     
     
     
     
    実はわたしは北海道出身で、小学校の頃はよく夏休みに利尻島にキャンプに行っており、実に約20年ぶりの利尻島でした。

    北海道に帰るのも約10年ぶりでしたが、あちこちにあるセーコーマート(北海道で展開するコンビニエンスストアです)や、牛や馬しかいない牧場がひたすら続く一本道を車で走らせていると、北海道に帰ってきたなぁという感じがしてとても懐かしかったです。

     
    札幌や函館などの都市には旅行に行ったことがある方は多いと思いますが、宗谷地方にも魅力的な場所がたくさんありますので、次の旅行先として足を運んでみてはいかがでしょうか。
  • カテゴリー:研究内容

    2022.08.02

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    新宿の京王プラザホテルで7/28(木)-29(金)にかけて開催された第40回日本受精着床学会学術講演会で発表してきました。

    演題名は「妊娠予測に基づくヒト胚盤胞の栄養外胚葉および内部細胞塊のトランスクリプトーム解析」で、少々難解なワードが並んでおりますが、簡単に説明しますと、妊娠期待率によって胚盤胞を3群に分けて遺伝子の働きを比較した、という内容です。

     
    当院では、胚盤胞を「受精から凍結までにかかった時間」と「胚盤胞の直径」の2つの指標をもとに評価しています。2018年3月から2020年12月までに凍結融解胚盤胞移植を受けた1,890症例について、この評価法により胚盤胞を3群に分け、妊娠率との相関を後方視的に解析したところ、それぞれ59.0%、34.2%、16.5%と有意な差を認めました(p<0.001)。
    この結果から、おそらくこの評価法には何らかの分子メカニズムが関わっているだろうと推測し、3群に分類した胚盤胞から内部細胞塊(着床後に胎児になる細胞群)と栄養外胚葉(着床後に胎盤になる細胞群)をそれぞれ単離して、RNAシーケンシングという手法により遺伝子の働きを比較しました。すると、内部細胞塊では26個、栄養外胚葉では67個の遺伝子に働きの違いがあることを見出しました。

    これらの遺伝子がどのように妊娠に関与しているかについては、残念ながら今のところ解析することは不可能です。しかしながら、研究が進みつつある人工ヒト胚モデルが実現すれば、将来的にはそのモデルを使って、今回発見した遺伝子群の機能解析が可能になるかもしれません。このような基礎データを積み重ね、ゆくゆくは非侵襲的で、且つ科学的根拠に基づいた胚盤胞評価法の確立に繋がればと考えています。

    この研究成果は、現在、論文にまとめて投稿中です。アクセプトされましたら、改めてご報告したいと思います。

     
    せっかくの学会参加でしたが、感染が拡大中ということもあり、滞在わずか4時間程度で帰路につきました。発表して、ランチョンセミナーのお弁当を食べて、午後のセッションに少し参加した程度です。

    対面でも気兼ねなくディスカッションでき、情報交換し合えるような日が1日でも早く戻ってきて欲しいものです。

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医療法人社団 煌の会 山下湘南夢クリニック 院長:山下直樹
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