医療法人社団 煌の会 YSYC山下湘南夢クリニック

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 不妊治療費助成金指定医療機関 藤沢駅南口徒歩4分 TEL 0466-55-5011

スタッフブログ 山下湘南夢クリニック(YSYC)は、神奈川県藤沢市にある不妊治療を専門とする医療機関です。 そこで働く私たちスタッフが、日々感じた事や不妊治療に関する事を書いています。

  • カテゴリー:研究内容

    2022.11.11

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    パシフィコ横浜で11/3(木)-4(金)にかけて開催された第67回日本生殖医学会学術講演会で発表してきました。

    演題名は「超解像イメージングにより捉えたヒト受精卵における精子尾部先端のひげ根様構造」です。簡単に説明すると、ヒト精子のシッポ(尾部)が受精後に卵子の中で根を張ったような状態になっているのを発見しました、という内容です。

     
    受精において精子が果たす主な役割としては、「父親の遺伝情報」、「卵子活性化因子」、「中心小体」を卵子内に持ち込むことが挙げられます。そのミッションを遂行するため(卵子に到達するため)、精子は尾部を使って卵子まで泳ぐわけですが、受精してしまえば尾部は不要になってしまいます。いや、不要と考えられてきました。

    精子尾部を動かすエネルギーを産生するミトコンドリアが受精後に分解されるメカニズムはよく研究されていますが、精子尾部自身がどのように分解されるかについては現在のところ情報が限られています。今回、私は超解像イメージング技術によって、受精後の精子尾部がどのようになっているのかを詳細に解析しました。

    その結果、卵子内に入った精子尾部の先端は複数に枝分かれし、まるで植物の「ひげ根」のようになっていることが分かりました。それはまるで、精子尾部が卵子内に根付いて、父親の遺伝情報をアンカーしているようにも見えました。このような報告は私の知る限りでは世界初です。

    以上の結果をまとめ、高精細な3D画像データを用いて発表したところ、これがなかなかのインパクトだったようで、座長の先生から「センセーショナルな発表」と評されました。大変嬉しいお言葉で、額面通りに受け取らせて頂きました。

     
     
    今回発見した「精子尾部のひげ根様構造」ですが、生物学的な意義は正直まだ分かりません。ただ、これまでの報告から少なくとも受精そのものには関与しないだろうと考えています。根拠として、まだ顕微授精が実施され始めて間もない頃、精子尾部を半分に切断して卵子内に注入しても受精することが論文で報告されました。このことから精子尾部の先端が無くても受精は起こるということが分かります。

    ちなみに現在では精子に不動化という処置を行って、尾部もそのまま頭部と一緒に注入するのがスタンダードです。しかしながら、マウス(げっ歯類)の場合には尾部を切断して頭部のみを注入して顕微授精します。この違いは先に述べた「中心小体」に関連するのですが、この話は機会があればまた。

     
    ただ、最近は精子尾部にも父親に由来する因子が含まれているのではないか?などと言われ始めており、ひょっとするとそれらの因子は胚の発育に関与していて、その因子を卵子内に留めるために、「精子尾部のひげ根様構造」が役割を果たしていれば面白いな、などと妄想しております。

    「受精後は不要と考えられていた精子尾部に、実は重要なミッションが残されていた!!」なんて、ロマンを感じませんか?

    誰も知らない現象なのですから、発想は自由ですし、それが正しいかどうかを解き明かす事こそ研究の醍醐味です。

    どこまで明らかにできるかは分かりませんが、来年には成果をまとめて論文に発表できればと考えています。

     
    今回の学会は完全に現地開催ということで、久しぶりに色々な方々と対面でお会いすることができました。質疑応答のやりとりなどは、やっぱりオンラインだと物足りないんですよね。。おかげで色々な情報を仕入れることができましたし、モチベーションもかなり上がりました。

    そしてクラウドファンディングでお世話になった方々とも直接ご挨拶することができ、久々に充実した学会期間を過ごすことができました。

     
    また感染が拡大しつつあるようです。手洗い・うがい、マスク着用等、今一度気を引き締めてまいりましょう!
  • カテゴリー:研究内容

    2022.08.02

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    新宿の京王プラザホテルで7/28(木)-29(金)にかけて開催された第40回日本受精着床学会学術講演会で発表してきました。

    演題名は「妊娠予測に基づくヒト胚盤胞の栄養外胚葉および内部細胞塊のトランスクリプトーム解析」で、少々難解なワードが並んでおりますが、簡単に説明しますと、妊娠期待率によって胚盤胞を3群に分けて遺伝子の働きを比較した、という内容です。

     
    当院では、胚盤胞を「受精から凍結までにかかった時間」と「胚盤胞の直径」の2つの指標をもとに評価しています。2018年3月から2020年12月までに凍結融解胚盤胞移植を受けた1,890症例について、この評価法により胚盤胞を3群に分け、妊娠率との相関を後方視的に解析したところ、それぞれ59.0%、34.2%、16.5%と有意な差を認めました(p<0.001)。
    この結果から、おそらくこの評価法には何らかの分子メカニズムが関わっているだろうと推測し、3群に分類した胚盤胞から内部細胞塊(着床後に胎児になる細胞群)と栄養外胚葉(着床後に胎盤になる細胞群)をそれぞれ単離して、RNAシーケンシングという手法により遺伝子の働きを比較しました。すると、内部細胞塊では26個、栄養外胚葉では67個の遺伝子に働きの違いがあることを見出しました。

    これらの遺伝子がどのように妊娠に関与しているかについては、残念ながら今のところ解析することは不可能です。しかしながら、研究が進みつつある人工ヒト胚モデルが実現すれば、将来的にはそのモデルを使って、今回発見した遺伝子群の機能解析が可能になるかもしれません。このような基礎データを積み重ね、ゆくゆくは非侵襲的で、且つ科学的根拠に基づいた胚盤胞評価法の確立に繋がればと考えています。

    この研究成果は、現在、論文にまとめて投稿中です。アクセプトされましたら、改めてご報告したいと思います。

     
    せっかくの学会参加でしたが、感染が拡大中ということもあり、滞在わずか4時間程度で帰路につきました。発表して、ランチョンセミナーのお弁当を食べて、午後のセッションに少し参加した程度です。

    対面でも気兼ねなくディスカッションでき、情報交換し合えるような日が1日でも早く戻ってきて欲しいものです。

  • カテゴリー:研究内容

    2022.06.24

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    「卵子の質を改善して不妊治療の成績向上を目指す研究」に関するクラウドファンディングですが、おかげさまで目標を達成して幕を下ろすことができました。皆様の応援のおかげです。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

     
    思えば2ヶ月前、プライベートクリニックの研究に外部資金を調達するための新たな試みとして、不安と淡い期待の中で挑戦をスタートさせました。

    目標金額は100万円。卵丘細胞の遺伝子解析費用に充てるための資金です。

    成功の鍵は情報拡散にあることは明白だったのですが、残念ながら私は人脈が狭く(開始前に100名に連絡しておくよう運営から指示されましたが、私には30名が限界…)、おまけにSNSとも無縁。流石にこのままでは戦えないということで、新たにTwitterを開設し、1日1ツイートを目標に、地道な情報拡散に努めました。クラウドファンディング開始当初は、クリニックホームページと新設された当院公式のSNSが頼みの綱という状況でした。

     
    そして迎えた初日。幸先よくこの日だけで30%の達成率を果たすことができました。このまますぐに目標を達成できるのでは?などという甘い期待はすぐに裏切られることとなり、ここから苦難の日々が続きます。

    開始1週間で達成率は35%、2週間で達成率は37%と、徐々に支援は伸びなくなっていき、残り2週間の時点で達成率は55%という状態。運営からは残り1週間で75%に達していないと成功は難しいと言われていました。つまり、あと1週間で20%(20万円)を獲得しなければならない状況にまで追い詰められていたのです。この事実を突きつけられた時には、流石に心が折れかけました。正直なところ、敗者の弁を考えたりもしました。

    しかしながら、幸いにしてこの時には既にたくさんの仲間を私は得ておりました。当院スタッフをはじめ、お世話になっている業者さん、またTwitter上のお会いしたことのない沢山のフォロワーさん達の熱い応援のおかげで、怒涛のラストスパートを繰り広げ、残り1週間の時点で達成率は77%にまで伸び、募集終了の3日前には100%を達成、そして驚くことに目標達成後にも支援は増え続け、最終的には達成率を141%にまで伸ばすことが出来ました。支援して下さったサポーターは107名にまで上り、さらに多くの方々に色々な形で応援して頂くことができました。

    心折れそうな私を叱咤激励してくれた運営スタッフさんにも本当に感謝しております。諦めていたらこの喜びは得られませんでした。

     
    面識が無いにも関わらず、本当にたくさんの方々から支援を頂きました。本研究への期待と信頼あってのものと受け止めています。大変嬉しく思うとともに、責任をもって本研究に臨まねばと気を引き締めております。

    サポーターの中には、友人、知人、ART従事者、研究者、研究ファン、取引のある業者さんの他に、実際にARTを経験された方々や現在ART治療中の方々までが多数含まれておりました。コメントに残して頂いた皆様の思いはしっかりと受け取らせて頂いています。

     
    情報拡散のためにオンライントークやラジオへの出演、学会での広告掲示など、様々な取り組みも行いました。機会を頂いた関係者の皆様、本当にありがとうございました。おかげさまで本研究やクリニックについて、多くの方々に知って頂く機会になったと思います。

    また、今回の挑戦を通して様々な方と繋がることが出来ましたが、将来、共同研究が出来たら良いなと思える方々にも出会いました。これは私にとって本当に大きなことです。このように副産物の収穫も大きかったように思います。

     
    正直しんどかったですが、得られたものは多く、挑戦して良かったと心から思っています。ただ、二度目はもう勘弁ですが…

    兎にも角にも、プライベートクリニックが外部資金を調達する一つの道を示すことができましたので、これからどんどん後に続いてもらえれば嬉しく思います。ノウハウもある程度蓄積されましたので、後進には出来る限り協力したいと思っています。プライベートクリニックでも戦えるぞ、というところを見せていきましょう!!

     
    今回の挑戦におきましては皆様から十分過ぎるほどの応援を頂きましたので、あとは私が研究でベストを尽くしてお応えするだけです!!

    研究の進捗はクリニックのホームページの他、academistのプロジェクトページとSNSで報告していく予定です。

    プロジェクトページ:https://academist-cf.com/projects/250
    Twitter:https://twitter.com/artnakenkyusha
     
    引き続き、「卵子の質を改善して不妊治療の成績向上を目指す研究」の進捗を見守って頂けますと幸いです。本当にありがとうございました!!

  • カテゴリー:研究内容

    2022.05.18

    こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。

     
    現在進めている卵子の老化に関する研究ですが、ありがたいことに色々なイベントに取り上げて頂く予定です。

    いずれのイベントもオンラインで実施され、モデレーターの方に進行して頂きながら、研究者が自身の研究を一般の方に分かりやすくお届けするという企画です。

    研究の話に限らず、ディープなトークを展開したいと思いますので、お時間に都合のつく方は是非ご参加下さい!!

    皆様と一緒に楽しい時間を過ごせればと思います。

     
    academist Bar (5/19): https://www.youtube.com/watch?v=z7MmI8_wYPY
     
     
     
    Club Science (5/24): https://www.clubhouse.com/event/PbLWXy9K?utm_medium=ch_event&utm_campaign=asGZIqn9ofz5BLkH34xVOg-196139
     
     
     
    また、6月には妊活ラジオでもお話しさせて頂く予定です。

    https://842fm.com/program/ninkatsu/
    こちらは詳細が決まり次第、HP上にて改めてご案内したいと思います。

     
    生殖補助医療の大きな課題となっている卵子の老化。

    そのメカニズムを明らかにすることができれば、卵子の質を改善する治療法や治療薬の開発につながることが期待されます。

    日本産科婦人科学会への研究登録も完了し、いよいよこれからスタートです!

    今回の研究で得られた成果が、多くのご夫婦の笑顔につながれば大変嬉しく思います。
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医療法人社団 煌の会 山下湘南夢クリニック 院長:山下直樹
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